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生活排水処理への取り組み
JICA草の根パートナー事業
先に行なわれたJICA開発パートナー事業では、現地に適した中小産業排水処理技術の開発と普及に努めましたが、インドネシアの水質悪化をもたらしている要因としては、産業排水よりも生活排水のほうが大きいといわれています。居住・地域インフラ省の方によれば、インドネシアの汚濁負荷の70%を生活排水が占めているそうです。
しかし、インドネシアでは、多大な出費を要する本格的な下水道を普及させることは、近い将来には期待できません。また、現在広く行われている腐敗槽による戸別処理は、設置スペースの問題や地下水汚染の観点から、住宅が密集する都市部での利用には限界があります。コミュニティベースで排水を集合処理することが望まれますが、既存の先進国の技術は高価に過ぎる上、運転管理もむずかしいものが多く、そのままインドネシアに適用することは困難です。インドネシアに適した処理技術・処理システムの開発が望まれます。
プロジェクト概要
| プロジェクト名 | インドネシア国ジョクジャカルタ特別州住宅密集地域における住民参加型コミュニティ排水処理モデルシステムの形成 |
| 実施期間 | 2年8ヶ月(2006年4月〜2008年11月) |
| 目的 | ジョクジャカルタの住宅密集地において、生活排水をコミュニティレベルで集合処理するモデルシステムをつくり、それを普及させることによって、インドネシアの水質汚濁問題を緩和・解決する |
| 活動地域 | インドネシア国ジョクジャカルタ特別州 |
| 活動内容 | 1.インドネシアに適した生活排水処理技術の開発(詳細) 2.住民参加型の運営・管理システムの形成(詳細) 3.コミュニティ排水処理に関わる人材育成(詳細) 4.コミュニティ排水処理に関する情報サービス(詳細) 5.コミュニティ排水処理に関するネットワークの形成(詳細) |
インドネシアに適した生活排水処理技術の開発
モデルシステム設置対象地域の選択事業はまず、モデルシステム設置対象地域の選択から始まりました。選択の基準としては、以下の2点を満たしていることを重視しました。
- その地域の状況が、インドネシアに典型的・普遍的にみられるものであること。(モデルの普及効果が大きいため)
- コミュニティ排水処理に対する住民の意欲が(相対的に)高いこと
ジョクジャカルタ市ならびにスレマン県の計16ケ所の候補地の現地調査を行った結果、クリチャック地区、スクナン地区の2ケ所がモデルシステムの設置対象地域となりました。
対象地の基礎データ
| クリチャック地区 | |
|---|---|
| 位置 | ジョクジャカルタ市内の北西部、スレマン県との境界近く。ウィノゴ川沿いに位置する。 |
| 対象世帯数 | 50世帯 |
| 排水・衛生状況 | 住宅密集地で、住民の半数近くがトイレのない環境。 |
| 水質分析結果 | 地域のすべての井戸から、大腸菌群を検出した。 |
| 地区の特徴 | 月収100万ルピア(約11,300円)以下の家庭が60%。 |
| スクナン地区 | |
|---|---|
| 位置 | ジョクジャカルタ市西側の周縁部に位置し、住宅密集度はクリチャックより低い。 |
| 対象世帯数 | 125世帯 |
| 排水・衛生状況 | 約40世帯がトイレを設置していない。また、トイレがあっても、腐敗槽などの特別な処理のない世帯が約20軒。小規模な豆腐製造業者2軒と、養豚業者4軒があるが、その排水はうまく処理されていない。 |
| 水質分析結果 | 地域内のすべての井戸水と河川水から、大腸菌群を検出した。 |
| 地区の特徴 | 地域住民の85%がごみの分別とリサイクル活動に参加しており、住民の環境意識は高い。 |
プロジェクトで採用する排水処理技術の決定
まず、排水処理システムを技術的に構想していくにあたり、ひとつのシステムで対象地域のすべてをカバーするのか、それとも複数のシステムでプロック毎に対するのか、という選択をしなければなりません。人口の密集度やコストなどを考慮して検討した結果、クリチャックはひとつのシステムで集中して処理を行い、スクナン地区では5つのそれぞれ独立したユニットを持つ分散型システムとすることになりました。
その後、APEX側から住民に対して複数の処理形式を提示し、それぞれの処理効率、維持管理費、メンテナンス等についての説明を行った上で、住民自身によって排水処理技術を選択してもらいました。
| クリチャック地区 | |
|---|---|
| 処理方式 | 回転円板式排水処理(*)及び嫌気性ろ床(*)処理 |
| 設備 | 前沈殿槽 |
| 嫌気性ろ床 | |
| 回転円板(立体格子状接触体回転円板) | |
| 沈殿槽 | |
| スクナン地区 | ||
|---|---|---|
| 処理方式 | A方式:嫌気性ろ床処理及び接触酸化処理 | B方式:嫌気性ろ床処理及び回転円板処理 |
| 設備 | 前沈殿槽 | 前沈殿槽 |
| 嫌気性ろ床 | 嫌気性ろ床 | |
| 接触酸化槽 | 回転円板(立体格子状接触体回転円板) | |
| 沈殿槽 | 沈殿槽 | |
住民参加型の運営・管理システムの形成
通常、このような排水処理事業は行政などが中心となって運営・管理を行いますが、この事業ではコミュニティレベルで排水を集合処理する、住民参加型のシステムを開発することを目指しました。あえて「住民参加型」としたのは、排水処理施設が持続的に運営されていくためには地域住民の主体的な取り組みや費用負担が不可欠であり、また住民の環境管理能力の向上にもつながると考えられたためです。
住民参加型運営・管理システムは、次のようなプロセスで形成していきました。
1.対象地域を管轄する地方政府に事業について説明し、支持をとりつける。
2.コミュニティ・リーダーと会い、プロジェクトについて説明し、協力をお願いする。

3.住民との会合を行い、プロジェクトについて説明し合意を得る。

4.住民との環境問題や排水処理に関する勉強会、住民参加型アセスメントを実施する。

5.排水処理設備の設置場所を定める。

6.技術にかかわる選択肢を示し、採用する技術を選択してもらう。

7.住民との全体集会を行い、排水処理システムの設置に関する合意を得る。

8.地方政府と、設置にかかわる手続きや費用分担について打ち合わせる(MOU締結)。

9.住民の参加の下に工事を行う。

クリチャック地区では、APEXが雇用した労働者に加え、住民2〜3名が日替わりで作業に参加しました。スクナンでは、平均20名の作業員を地区内から雇用し、作業を進めました。
10.排水処理システムの完成。地域住民・地区長らによる竣工式の実施。

11.排水処理システムの運転管理にかかわるトレーニングを実施する。

12.住民による自主的運営管理の開始。必要な資金は、住民自らが各家庭から徴収。

排水処理施設の運営・管理(主に電気代)にかかる費用は、住民が自ら出費し集金していくことで合意。クリチャック地区では1世帯あたり6,000ルピア/月(約68円)、スクナン地区では1世帯あたり3,000ルピア/月(約34円)を負担することになっています。
